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仮想通貨の税金と確定申告

更新日: 2025年10月20日 | 税金
仮想通貨の税金

仮想通貨で利益が出たものの、「税金の計算方法が分からない」「いつ確定申告が必要なの?」といった疑問や不安を抱えている方は少なくありません。仮想通貨の税金計算は非常に複雑で、知らないと思わぬ追徴課税を受けるリスクもあります。この記事では、仮想通貨の税金の基本から、具体的な計算方法、確定申告の手順、そして賢い節税対策まで、初心者の方にも分かりやすく、網羅的に解説します。

【大前提】仮想通貨の利益は「雑所得」

まず最初に理解すべき最も重要な点は、2025年現在、日本の税法上、仮想通貨取引で得た個人の利益は原則として「雑所得」に分類されるということです。これは、給与所得など他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」の対象となります。

株式投資との決定的な違い:税率と損益通算

株式投資やFXの利益が、他の所得と分離して一律約20%の税率で課税される「申告分離課税」であるのに対し、雑所得は所得が多ければ多いほど税率が高くなる「累進課税」が適用されます。住民税と合わせると、税率は最大で約55%にもなります。

所得税の速算表(国税庁 No.2260)

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

上記に加えて、一律10%の住民税と、2037年までは復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。例えば、仮想通貨の利益と給与所得などを合わせた課税所得が500万円の場合、所得税率は20%です。所得税は 500万円 × 20% - 427,500円 = 572,500円。これに住民税(約50万円)と復興特別所得税が加わります。

さらに、株式投資では損失を翌年以降3年間繰り越せる「繰越控除」が認められていますが、雑所得である仮想通貨の損失は、翌年以降に繰り越すことができません。ただし、同一年内であれば、他の雑所得(例:副業の原稿料など)の利益と相殺することは可能です。

【重要】利益が確定(課税対象)となるタイミング

「日本円に換金しなければ税金はかからない」というのはよくある誤解です。以下のタイミングで「利益が確定した」と見なされ、課税対象となります。

  • 仮想通貨を売却して日本円(法定通貨)にした時
    最も分かりやすいケースです。購入時よりも高い価格で売却すれば、その差額が利益となります。
  • 仮想通貨で別の仮想通貨を購入した時
    これは初心者が最も見落としがちなポイントです。例えば、ビットコインでイーサリアムを購入した場合、その時点で保有していたビットコインを一度売却(利益確定)し、その日本円価値でイーサリアムを購入した、と見なされます。
  • 仮想通貨で商品やサービスを購入した時
    ビックカメラなどでビットコイン決済をした場合も同様です。その時点の時価で仮想通貨を売却し、商品を購入したと見なされます。
  • ステーキングやレンディングで報酬を得た時
    仮想通貨を預け入れることで得た利息(報酬)は、受け取った時点の時価で所得として計上されます。
  • DeFiのイールドファーミングで報酬を得た時
    流動性提供の見返りとして得たガバナンストークンなども、上記と同様に取得時点の時価で所得認識が必要です。
  • マイニングで仮想通貨を得た時
    マイニングによって新規に仮想通貨を取得した場合、その時点の時価から経費(電気代、機材の減価償却費など)を差し引いた額が所得となります。
  • エアドロップやNFTゲームで仮想通貨やNFTを得た時
    無料で受け取った場合でも、取得時点での時価が所得として認識されます。(ただし、市場で売買されておらず時価が0円とみなせる場合は、売却するまで課税されません)

損益の計算方法:「移動平均法」と「総平均法」

年間の損益を計算するためには、まず仮想通貨1単位あたりの「取得価額」を計算する必要があります。国税庁は、その計算方法として「移動平均法」と「総平均法」の2つを認めています。

移動平均法

仮想通貨を購入する都度、その時点での残高と購入価額を合算して、新しい平均取得価額を算出する方法です。計算は複雑ですが、期中の損益をより正確に把握できます。

移動平均法の計算例

  1. 4月1日: 1BTCを100万円で購入 → (保有: 1BTC, 平均取得価額: 100万円)
  2. 6月1日: 0.5BTCを65万円 (レート130万円/BTC)で購入 → (保有: 1.5BTC, 平均取得価額: (100万円 + 65万円) ÷ 1.5BTC = 110万円/BTC)
  3. 8月1日: 1BTCを150万円で売却 → 利益: (150万円 - 110万円) × 1BTC = 40万円

総平均法

1年間(1月1日〜12月31日)に購入した仮想通貨の総額を、同期間に購入した総量で割って、年間の平均取得価額を算出する方法です。計算は比較的簡単ですが、年末まで損益が確定しないというデメリットがあります。

総平均法の計算例

上記と同じ取引の場合...

  1. 年間の購入総額: 100万円 + 65万円 = 165万円
  2. 年間の購入総量: 1BTC + 0.5BTC = 1.5BTC
  3. 年間の平均取得価額: 165万円 ÷ 1.5BTC = 110万円/BTC
  4. 8月1日の売却による利益: (150万円 - 110万円) × 1BTC = 40万円

一度選択した計算方法は、原則として3年間は変更できません。どちらかを選択し、継続して同じ方法で計算する必要があります。事前の届出がない場合は、総平均法で計算することになります。

確定申告は必要?不要?ボーダーラインを知ろう

仮想通貨で利益が出たからといって、全員が確定申告をしなければならないわけではありません。

  • 給与所得者の場合: 給与を1か所から受けていて、給与所得や退職所得以外の所得(仮想通貨の利益を含む)の合計が年間20万円を超えた場合に確定申告が必要です。
  • 被扶養者・専業主婦(主夫)・学生の場合: 合計所得金額が48万円(基礎控除額)を超えた場合に確定申告が必要です。
  • 個人事業主・フリーランスの場合: 事業所得など他の所得と、仮想通貨の利益を合算した合計所得金額が、基礎控除や社会保険料控除などの所得控除額を上回る場合に確定申告が必要です。

20万円以下でも住民税の申告は必要!
所得税の確定申告が不要な「20万円ルール」は、あくまで所得税の話です。住民税にはこのルールは適用されないため、利益が出た場合は別途、お住まいの市区町村の役所で住民税の申告が必要です。ただし、確定申告を行えば、その情報が役所に共有されるため、住民税の申告は不要になります。

確定申告の実践ガイド

1. 全ての取引履歴を取得する

利用している全ての国内・海外取引所、ウォレットの取引履歴(年間取引報告書など)をダウンロードします。DeFiなど取引所に履歴がないものは、Etherscanなどのブロックチェーンエクスプローラーから自分で追跡する必要があります。

2. 経費をリストアップする

仮想通貨取引に関連する費用は経費として計上できます。領収書や明細は必ず保管しておきましょう。

  • 取引手数料、送金手数料
  • 損益計算ツールの利用料
  • 勉強のための書籍代、セミナー参加費
  • 取引に使用したPCやスマートフォンの購入費(10万円以上は減価償却)
  • 取引に使用したインターネット回線や電気代の一部(家事按分)
  • 税理士への相談・依頼費用

3. 損益計算を行う

取引履歴と経費を元に、選択した計算方法(移動平均法 or 総平均法)で通貨ごとに年間の損益を計算します。取引回数が多い場合、手計算はほぼ不可能です。GtaxやCryptact、Koinlyといった仮想通貨専門の損益計算ツールの利用を強く推奨します。

4. 確定申告書を作成し、提出する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、オンラインで簡単に申告書を作成できます。計算した所得金額を「雑所得(その他)」の欄に入力し、必要書類を添付して、e-Tax(電子申告)または郵送、税務署への持参で提出します。

  • 申告期間: 原則として、翌年の2月16日〜3月15日

賢く節税するための5つの戦略

  1. 年間の利益を非課税枠内に抑える: 給与所得者の場合は20万円、扶養者の場合は48万円など、確定申告が不要な範囲内に利益を抑えるように利益確定のタイミングを調整する。
  2. 含み損の銘柄を売却して利益と相殺する(損出し): 年末に、含み損を抱えている仮想通貨を一度売却して損失を確定させることで、その年に出た他の仮想通貨の利益と相殺できます。(売却後すぐに買い戻しても税法上は問題ありません)
  3. 経費を漏れなく計上する: 上記でリストアップした経費をしっかりと計上し、課税所得を圧縮する。
  4. iDeCoやふるさと納税などの所得控除を活用する: 所得控除を最大限に活用することで、課税対象となる所得金額そのものを減らすことができます。
  5. 法人化を検討する(利益が大きい場合): 年間の利益が800万円〜1000万円を安定して超えるような場合は、法人を設立した方が税率を低く抑えられる可能性があります。法人税率は所得800万円までが15%、800万円超が23.2%と、個人の最大税率より低くなります。また、損失の繰越控除(10年間)も可能です。ただし、設立・維持コストがかかるため、税理士への相談が必須です。

もし申告しなかったら?重いペナルティ

確定申告を怠ると、本来納めるべき税金に加えて、「無申告加算税」(最大20%)や「延滞税」(最大年14.6%)、悪質な場合は「重加算税」(40%)といった重いペナルティが課せられます。税務署は取引所の取引履歴を調査する権限を持っており、「バレないだろう」という考えは非常に危険です。

まとめ:税金の知識は、資産を守るための必須スキル

仮想通貨の税金計算は複雑で面倒に感じるかもしれませんが、利益が出た投資家にとっては避けて通れない義務です。正しい知識を身につけ、計画的に利益確定や節税対策を行うことが、手元に資産を残すための鍵となります。取引履歴はこまめに管理し、利益が大きくなった場合や、計算に不安がある場合は、早めに仮想通貨に詳しい税理士に相談することをおすすめします。